Mじてゐる。」ゲーテの有機的世界観にとつてはどこまでも自然がその地盤であつた。これに反し弁証家ヘーゲルにとつては歴史がそのエレメントであつたのである。弁証法の欠くべからざる要素をなす飛躍乃至非連続の思想の如きは、ゲーテには堪へ難きものであつたに相違ない。彼はヘーゲルの哲学を有機体説的に解釈し得た限り――それは実際このやうに解釈され得る方面を多分に含んでゐる――それを尊重した。
 かくして我々はゲーテにおける歴史の概念を探り、それを Typologie, Morphologie, Monadologie, Organologie, Mythologie 等の概念によつて性格付けて来た。これらの概念は彼において相互に繋り合ひ、貫き合つてゐる。それらの地盤をなすものはまさに自然であり、それらはまた人間の観想的態度と内面的に結び付いてゐた。かかる自然概念の哲学的特質は、私の歴史哲学の中で明かにしておいたやうに、それにおいては「存在」と「事実」とが単に内在的連続的に見られて、同時にまた超越的非連続的に捉へられないといふことである。換言すれば、そこでは存在と事実との関係が弁証法的に把握されてゐない
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