トスの概念が既にプラトンの哲学において如何に重要な位置を占めてゐたかを知つてゐる。しかもミュトスの概念がこのやうに重要な意味を有したのは、思想史上|殆《ほとん》ど凡ての場合、一般に生成、従つてまた歴史の問題に関してであつたといふことは興味深きことであらう。かくてゲーテにおけるミュトロギーとしての歴史の概念の特殊性を理解するために、彼における生成乃至発展の概念が究明されねばならぬ。
四
生成と運動の思想は夙《つと》にゲーテに含まれてゐた。「自然のうちにあるのは永久の生命、生成と運動である。自然は永久に転化し、そのうちには如何なる瞬間にも静止がない。」と既に二十二歳のゲーテは書いてゐる。この思想は『植物の変態』、その他の彼の晩年の自然研究において完成されるに至つた。然るにこのときその基礎には、つねに形態或はテュプス、或は原現象の観念が存してゐた。植物の場合ではそれはかの「原植物」である。発展の思想はこのやうに形態の思想またはテュポロギーと結び付くことによつて Morphologie の思想となる。モルフォロギーの思想とテュポロギーの思想とはもともと離るべからざるもので
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