った、一方他の三人は彼等の混乱せる十二時間のこの最後の怪事をただじっと見るばかりであった。
 師父ブラウンの手が下りた時に、彼等は子供のように若々しい真顔になった。彼は大きい溜息をついて、そして云った、「大急ぎでかたをつけるとしましょうかな。そうじゃ、あなたがたに手っ取り早く呑み込ませるには」と彼は博士の方に向った、「シモン博士、あなたはなかなか鋭い頭脳を持っておられますな。わしは今朝あなたがこの事件について五箇条のえらい質問を出されたのを伺いましたわい。それで、もう一度あれをわしに御質問になれば、わしはそれに御答をして見せますがな」
 シモン博士の鼻眼鏡は疑惑と驚嘆のあまり、鼻からおちた、が彼はすぐに[#「すぐに」は底本では「すぐは」]答えていった、
「よろしい、第一の疑問は、人一人ぐらいは刺針ででも殺せるのに、なぜ無格構な軍刀等で殺したのかという事ですな」
「人間は刺針等では首を刎ねる事は出来ません」と坊さんはおだやかに云った、「しかも、この殺人には、首を刎ねるという事が絶対に必要じゃったのです」
「なぜですか?」とオブリアンは興味をもって訊ねた。
「してつぎの疑問は?」とブラウン
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