は河の中に漂っているだろうと云うので、この家《うち》の男共が今なお捜索中であった。師父ブラウンはオブリアン司令官の鋭敏な神経に付合いをするような人では少しもないので、新しい首の所へ行って、眼をしばたたきながら検べた。それは横に射込む赤い朝陽を受けて、銀白色の火をもって飾られた、ベタベタした白髪の束としか見えなかった。面部は醜い紫色をしていて、一見罪人型と見えたが、それは河中に転がっている間に木や石に打ちこわされたのであった。
「おはよう、オブリアン君」ヴァランタンは叮嚀に云った。「ブレインがまたもや首斬罪を犯したという事はもう御ききでしょうか?」
師父ブラウンはまだ白髪の首の上に身を屈めていた、それから顔を上げずに彼はいった。
「はア、左様、今度のもブレインの仕業だということはたしかじゃろう」
「そうですとも、それは常識でわかります」とポケットに両手を入れて、ヴァランタンが云った。「前のと同じ方法で殺しました。そして前のから数ヤードもはなれない場所においてですな、しかも彼が持ち逃げたと考えられるあの同じ軍刀でスパリとやったものです」
「左様、左様、ほんとになア」と師父ブラウンは素直に
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