南国太平記
直木三十五
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)樵夫《きこり》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)紺|脚絆《きゃはん》だ。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]
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呪殺変
高い、梢の若葉は、早朝の微風と、和やかな陽光とを、健康そうに喜んでいたが、鬱々とした大木、老樹の下蔭は、薄暗くて、密生した灌木と、雑草とが、未だ濡れていた。
樵夫《きこり》、猟師でさえ、時々にしか通らない細い径《みち》は、草の中から、ほんの少しのあか土を見せているだけで、両側から、枝が、草が、人の胸へまでも、頭へまでも、からかいかかるくらいに延びていた。
その細径の、灌木の上へ、草の上へ、陣笠を、肩を、見せたり、隠したりしながら、二人の人が、登って行った。陣笠は、裏金だから士分であろう。前へ行くその人は、六十近い、白髯《しらひげ》の人で、後方《うしろ》のは供人であろうか? 肩から紐で、木箱を
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