だ。現状では日本の文壇も心細いこと甚だしい。
そこで、ではあらゆる種類の文芸を――ここでは特に大衆文芸に限ってもいい――時代小説も、探偵小説も、恋愛小説も少年少女小説も、私が序講で分類したあらゆる種類のものを一括して、将来大衆文芸は――文芸は如何なる方向へ進むだろうか、を考えるとき、その方向を予言せよと云うなら、すべてを代表して「科学的傾向」へ、と私は断乎《だんこ》として答えよう。文芸は、将来科学的文芸の方向へ進むより他に途はないのである。
このように考察して来るとき、次の講義で先ず何を講ずべきだろうかの問題も自ら解釈される。
すなわち、私は次回に於て先ず、「科学小説」を講じようと思う。然る後に、他の種類のあらゆるものを一括して講ずるのが正しい順序であろうと思うから――。
第六章 科学小説
前章の結論に於て、私は諸君とともに次のことを見て来た。未来は科学のものだ。あらゆる小説は、将来益々科学的傾向をおびて来るだろうし、又必然的にそうならなくてはならないのであろう、と。では、「科学小説」とは?
だが、現在我国には未だ、「科学小説」と呼べるべきものは存在していない。現在、
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