彼の多智多能なるを物語っている。殊に、かの「文化史大系」に到っては、彼の広汎なる科学的智識をもってして甫《はじ》めて完成され得たものと云うべきである。おそらくは、今後大衆文芸の第一線に立つ人ではあるまいか。その他、ライダー・ハガード、ラインハルト、ウォルチイなぞの作品は、日本の大衆文芸作家の学ぶべき多くの点を備えているように考えられる。
 ハガードはすでに我国でも充分流布されているが、他の一人ウォルチイには、「紅※[#「くさかんむり/繁」の「毎」に代えて「誨のつくり」、第3水準1−91−43]※[#「くさかんむり/婁」、第3水準1−91−21]《べにはこべ》叢書」があり、ラインハルトには、「七つの星の街」、「螺旋《らせん》形の階段」なぞがある。これらの人たちは、種々な意味で最近の科学的智識を吸収しており、殊にハガードの如きは、空想的にしてなお且学術的智識の匂い高き、我が大衆文芸作家のもって参考とすべき作家である。
 現在、日本の探偵作家を顧みても、純粋の作家である以外に、医者、科学者が比較的多数含まれているのは、矢張りその方面の智識なくしては探偵小説が書き得ないからである。
 自分自身
前へ 次へ
全135ページ中96ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング