であった。
金翅鳥片羽九万八千里、海上に出でて龍を食う――その大気魄に則《のっと》って、命名した所の「五点之次第」で更に詳しく述べる時は、敵の刀を宙へ刎《は》ね、自刀セメルの位置を以て、敵の真胴を輪切るのであった。敵を斃すこと三人であった――。
町人は葉之助を突き飛ばそうとした。が、葉之助は頸首を捉えて、ギューッと地面へ押し付けた。
突然武士が刀を抜いた。ヒョイと葉之助は後へ退った。刀は町人の首を切った。ヒーッと町人が悲鳴を上げた。
「しまった?」と武士は刀を引いた。
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これは、国枝史郎君の「八ヶ嶽の魔神」の中の斬り合いの一節である。
次の簡単な一行は、大佛次郎君の「鞍馬天狗」からの抜萃である――。
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近藤勇は虎徹、中原富三郎は助広、刀も刀、斬り手も斬り手、じっと相青眼に構えて睨合った。
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同じく、大佛君の「赤穂浪士」の一節――。
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やがて、三人は、芝生の中央へ進み出た。
目と目と、合う。その刹那に、霧のつめたく沈んだ宙に、三条の刀身が静に抜き放たれた。
肌にしみる
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