いる人もないではない。が、非常に多数の人たちは読書を娯楽と考え勝ちなのである。自分の要求すべきことなぞを知らず、違った世界を見たがったり、自分の生活を慰め、忘れようとしたりせんがため、全然無関係な書物を読もうとする傾向は次第に強くなって来ている現在である。何といっても、探偵小説は何等生活に寄与するものを持っていないに拘らず、非常に一般に要求され、世界的な流行を見ているのである。このことは、注目に値いする事実である。こうした流行に対する注目、そしてそれに適当する骨[#「骨」に傍点]も是非、商売的には心得ておくべきであろう。
と同時に、こういう無数の人たちの要求を正しい方向に導くためには、プロレタリア派の連中はその素材を非常に甘味《あま》い、オブラアトで包む必要がありはしないか。そんなことをするのは非階級的だとか何とか嗤うべきではない、と自分は考える。
例えば、百姓一揆なぞを書くことも非常にいいと考える。現在の労働争議の詳細なことなぞはおそらく現代物として書きえない点が少くないだろう。ところが、一揆なぞになると随分詳細なことも書いて差支えないのである。
由来、日本の検閲は映画にしても
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