謀本部の「日本戦術史」地理歴史の増刊「日本兵制史」、住宅に就ては「日本民家の研究」、武道では山田次朗吉氏の「日本剣道史」(剣道史は最近に自分も刊行する)「武術叢書」「剣道学」等。もし専門的になるなら「城かくの研究」とか「城下町の研究」「武家時代の研究」とか、猶徳川期の物では無数にあるが次の章に挙げる。

    二 大衆物について

 時代小説の今一つの種類、所謂、大衆文芸と俗に呼ばれているものについて――。
 これは、その他、髷物、新講談などとも呼ばれているのであるが、かかる通俗的な、種々な名称が与えられいるように、しかく通俗極まる小説を指すのである。
 大衆物は、いうならば現在の芸術小説――文壇小説の興味のなさに対する反動として生れて来、そして読書階級の欲求に投じたのである。従って、興味中心的であり、あくまで娯楽的にとどまり、その限りに於て、芸術的文学観の立場からは批評し得ないものであり、無価値に等しい低級な小説の類だと云っていい。所謂、小説の要素としての心理過程、社会史料、性格、思想なぞの描写に関しては、読む方も書く方も期待してはいないのだから、芸術的批評の適用され得ないのも当然
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