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 そして以上の二つは、当面の世界の二大潮流である。最後に、
 一、自然的人間的作用の科学文明の発展進路に対する正当なる批判、が亦文学によってなされなくてはならぬと云うこと。
 つまり、世界中の距離が縮み、世界中の思想がインターナショナル的になり、世界の学問と学問との領域が益々接近しつつある今日、その各々のエッセンスを擢《ぬき》んで、理解し、其専門化して歪められたる方向を正しきに引き戻すのは、文学者の綜合的知識と批判を俟《ま》つの他は無い。かかる任務を果し得る文学は、より以上に構成的、綜合的でなくてはならぬと考える。以上の意味に於て、私は将来の小説は、「社会的小説」であると断言して憚《はばか》らないものである。
 もし、これを文学史的に観察するならば、嘗て人類が未だ宗教に情熱を有していた当時、文学が宗教と結び付いていたように、その後文学が哲学と結び付いたが如く、そこで、又文学者の人生観に依って、人類を救わんとした如く今日我々の情熱は社会制度の変革に燃えている。それと文学が結び付くことは、歴史的に必然なことである。そして次の時代に於て、文学が科学と結合するであろうことも亦
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