偵も、刑事も、デテクチーブという言葉で代表される。その点、我国とは甚だ事情が違っているといわねばならない。
 こう云った種々の条件で、我国では「探偵小説」が非常に書きにくい状態におかれているのである。我国に、本格的ないい「探偵小説」が少いのも、以上のような理由のためであろう。
 序《ついで》に、この章で、今日流行している「実話物」に触れて置こう。
 一体、「実話」は、アンチ文学要求の一つなのであるが、これも亦、外国での流行から影響された結果なのである。我々は、ここでも外国と日本との差違を考慮に入れなければならない。
「実話」は外国に流行しはじめているのであるが、特にアメリカに於て最も盛んである。それは、如何なる理由によるかというと、アメリカの生活――社会生活、従って個人生活は実に、小説以上のものなのである。その多種多様であり、凡ゆる点でセンセショナルなことは驚くべきものがある。
 一例をとるならば、アプトン・シンクレアの小説を読んだなら、アメリカ大都市市政の腐敗が東京市政の腐敗などとは比較にならぬほど驚くべきものであり、又、タマニホールなどの策動の如何に深刻で計画的であるかは、我、田中
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