里霧中に彷徨《さまよ》わせるのもいい――ヴァン・ダインの「グリース家の惨劇」、次から次へと糸をたぐるように無限に思われるほどの人物を点出して、なお彼方に犯人をかくすのもいい――ルブランの「虎の牙」、兎に角、要は読者にサスペンスをもたしていくことが必要である。
 その為には、トリックが必要となって来る。伏線に伏線が重なりもつれ合う、そして読者が五里霧中になる。一つがもつれると、他が少しほぐれ、そして又その上に伏線が重なる、といった具合に、常にある部分の期待と期待につらなる不安――サスペンスを持たせるためには、トリックが重要な役割をする。ルブランの探偵小説など御覧になるとすぐわかる。いうまでもなく、そのトリックは充分現実性を備えていなくてはならない。だから、第三の特徴として「暴露されないトリック」が挙げられるのである。
 以上のようなものが「探偵小説」の特徴として数えられる。「探偵小説」は、大衆文芸の一分野としても考えられるのであるが、それ自身又独立して「探偵小説」としての分野を展開している。即ち、次の三つの種類にわけて考えていいと思う。
 本格的「探偵小説」、文学的或は芸術的「探偵小説」
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