に、何んなに、文化的発育におくれているか判らないが、文化的進歩よりも、金儲けの方が大事だろうから、せいぜいもがくがいい、そして金を儲けて、シュークリームを食いたい、と思った時、銀座のコロンバンのようなクリームが何処にも、大阪には売っていない事を知った時、成る程と、感じるがいい。文化的進歩とは、シュークリームの甘《うま》い、拙《まず》い位のものだが、金儲けもその程度のものにすぎない。
文化的ということ
文化(この言葉は、もう少し古くなっているが、大阪では、丁度適当であろう)的にみて、大阪が東京に遅れているのは、誰も否定できますまい。遅れていたって一向に差支えは無いが、とにかく、昨日云ったように、甘いシュークリームが食えぬ程度の不満さはある。
円タク、酒場が、東京へ侵入したが、これは、野蛮人がローマへ攻め入ったのと同じだと見た方がいい。少くとも「赤玉」とか「美人座」とかいう俗悪な名称は、非文化的大阪人の頭からでないと生れない。図々しくて露骨で、控え目と、礼儀とを知らない(文化とは、女郎屋を公認する代りに、洗滌器をもった女が、安ホテルにいるだけのことである。結局同じなら、そんなに
前へ
次へ
全69ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング