を設けておくとやがて目付、富田与左衛門、岡庄右衛門、石川甚太夫、徒目付、市川新介、山田市郎右衛門、侍頭高木源右衛門、足立兵左衛門が、討手、仇人《かたき》を中に、馬上と徒歩で入ってくる。
足軽が検使のある左右へ手桶に水を入れて置く。侍頭太鼓を脇にして撥をもっている。
「佐々木清十郎、これへ」
小目付の声に左右から出る。
「鎖帷子《くさりかたびら》の類は着用致しおらぬな」
「致しておりませぬ」
「心静かに勝負なされい」
「有難う存じ奉ります」
中川十内、同じこと、
「佐々木九郎右衛門、出ませい」
右手から、
「衣類下を改めい」
足軽、九郎右衛門の衣類の上から撫でてみて、
「着用致しておりませぬ」
「よし、卑怯な振舞致すまいぞ」
「有難く存じます」
「盃」
一人の足軽が白木の三宝に土器《かわらけ》をのせて中央へ持って出る。後のが手桶を提げて行って、
「盃をなされ」
足軽の出す土器を受けて九郎右衛門が一口、受取って足軽が十内に指す、十内弥五郎に指して弥五郎から清十郎へ廻ったのを、口をつけて、
「いざ」
と叫ぶ。発止と地になげつけて砕く。と、どーん、どーんと合図の太鼓、足軽が三宝
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