かしちがうの」
「何を――手前なんぞ、安夜鷹ばかり買やがって、討入と聞いたら、腰の抜ける方だろう」
「何うだ」
「ちげえねえ。所で、その寺坂め、泉岳寺の人数の中にゃ、いないんだってのう」
「そこが、遠慮――何んとかってんだ。国許へ知らせの役に、行ったんだろうって、邸の御用人が仰しゃってたが、そうだろうよ。下郎は士じゃねえから、お上でも大目に見らあな。それに、侍が一人いなくなったといや、命を惜しんでと噂されるだろうし、誰も国許へなど行く人は無いだろう。何んしろ、えらい人ばかりだからのう、そこで、寺坂、頼むってなことになって――お前、生残って寺坂で御座い、品川へでも行きゃあ、女にもてるぜ」
「ところが、そんな奴に限って、余り男振りはよくねえにきまってらあ」
「手前の面あ、何んだ。よく、鏡を見て、熱を出さねえのう」
「お前なあまた、化物がびっくりしたって面だ。河岸のお玉がぬかしてたぞ。甚内の面を見ると、ぶるぶるとするって」
「へん、ぶるぶると。嬉しがるんだ。このとんちき」
「一生、とんちきかなあ。俺でも、お前、主人が殺されりゃあ、討入に行くぜ」
「夜鷹の所へか」
「本当に、※[#「言+墟のつ
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