団《ふとん》を敷いて、闇《やみ》の空にチラチラする星の影を見ながら寝た。母親が階段《はしご》を上って来て、あけ放した雨戸をそッとしめて行ったのはもう知らなかった。
翌日は弥勒《みろく》に出かけて、人夫を頼んで、書籍寝具などを運んで来た。二階の六畳を書斎にきめて、机は北向きに、書箱《ほんばこ》は壁につけて並べておいて、三尺の床は古い幅物《かけもの》をかけた。荻生さんが持って来てくれた菖蒲《しょうぶ》の花に千鳥草《ちどりぐさ》を交《ま》ぜて相馬焼《そうまや》きの花瓶にさした。「こうしてみると、学校の宿直室よりは、いくらいいかしれんね」と荻生さんはあたりを見回して言った。親しい友だちが同じ町に移転して来たので、なんとなくうれしそうににこにこしている。寺の本堂に寄宿しているころは、清三は荻生さんをただ情に篤《あつ》い人、親切な友人と思っただけで、自分の志や学問を語る相手としてはつねに物足らなく思っていた。どうしてああ野心がないだろう。どうしてああ普通の平凡な世の中に安心していられるだろうと思っていた。時には自分とは人間の種類が違うのだとさえ思ったことがある。それが今ではまるで変わった。かれは
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