容花《びようはな》のごとくであったということをも語った。
 オルガンの音がやがて聞こえ出した。小使が行ってみると、若い先生が指を動かしてしきりに音を立てているかたわらに、海老茶《えびちゃ》の袴《はかま》を着《つ》けたひで子は笑顔《えがお》をふくんで立った。
 校庭は静かであった。午後の日影に雀がチャチャと鳴きしきった。テニスコートの線があきらかに残っていて、宿直室の長い縁側の隅にラケットやボールや網《ネット》が置いてあるのが見える。庭の一隅《かたすみ》には教授用の草木が植えられてあった。
 ひで子を送って清三はそこに出て来た。
 薔薇《ばら》の新芽が出ているのが目についた。清三はこれをひで子に示して、
「もう芽が出ましたね、早いもんだ、もうじき春ですな」
「ほんとうに早いこと!」
 とひで子はその一葉をつまみ取った。
 やがて校外の路《みち》を急いで帰って行く海老茶袴の姿が見えた。

       四十四

 日露開戦、八日の旅順と九日の仁川《じんせん》とは急雷のように人々の耳を驚かした。紀元節の日には校門には日章旗《にっしょうき》が立てられ、講堂からはオルガンが聞こえた。
 東京の騒
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