のがいまさらのように感じられてきた。落ちて行く深い谷から一刻も早く浮かびあがらなければならぬと思った。
失望と空虚《くうきょ》とさびしい生活とから起こった身体《からだ》の不摂生《ふせっせい》、このごろでは何をする元気もなく、散歩にも出ず、雑誌も読まず、同僚との話もせず、毎日の授業もお勤《つと》めだからしかたがなしにやるというふうに、蒼白《あおじろ》い不健康な顔ばかりしていた。どことなく体がけだるく、時々熱があるのではないかと思われることなどもあった。持病の胃はますますつのって、口の中はつねにかわいた。――ふまじめな生活がこの不健康な肉体を通じて痛切なる悔恨《かいこん》をともなって来た。弱かったがしかし清かった一二年前の生活が眼の前に浮かんで通った。
「絶望と悲哀と寂※[#「宀/日/六」、211−12]《せきばく》とに堪へ得られるやうなまことなる生活を送れ」
「絶望と悲哀と寂※[#「宀/日/六」、211−13]とに堪へ得らるるごとき勇者たれ」
「運命に従ふものを勇者といふ」
「弱かりしかな、ふまじめなりしかな、幼稚なりしかな、空想児《くうそうじ》なりしかな、今日よりぞわれ勇者たらん、今
前へ
次へ
全349ページ中260ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田山 花袋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング