根川の河岸の路に秋のしずかさを味わった。羽生の寺の本堂の裏から見た秩父《ちちぶ》連山や、浅間嶽の噴煙《ふんえん》や赤城《あかぎ》榛名《はるな》の翠色《すいしょく》にはまったく遠ざかって、利根川の土手の上から見える日光を盟主《めいしゅ》とした両毛《りょうもう》の連山に夕日の当たるさまを見て暮らした。
 ある日、荻生さんが来た。明日が土曜日であった。
「君、少し金を持っていないだろうか」
 荻生さんは三円ばかり持っていた。
「気の毒だけども、家のほうに少しいることがあって、翌日《あす》行くのにぜひ持って行かなけりゃならないんだが……月給はまだ当分おりまいし、困ってるんだが、どうだろう、少しつごうしてもらうわけにはいかないだろうか。月給がおりると、すぐ返すけれど」
 荻生さんはちょっと困ったが、
「いくらいるんです?」
「三円ばかり」
「僕はちょうどここに三円しか持っていないんですが、少しいることもあるんだが……」
「それじゃ二円でもいい」
 荻生さんはやむを得ず一円五十銭だけ貸した。
 翌朝、それと同じ調子で、清三は老訓導に一円五十銭貸してくれと言った。老訓導は「僕もこの通り」と、笑って銅
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