う日がよほど低かった。かれは大越の本道には出ずに、田の中の細い道をあちらにたどりこちらにたどりして、なるたけ人目にかからぬようにして弥勒《みろく》の学校に帰って来た。
かれの顔を見ると、小使が、
「荻生さんなア来さしゃったが、会ったんべいか」
「いや――」
「行田に行ったんなら、ぜひ羽生に寄るはずだがッて言って、不思議がっていさっしゃったが、帰りにも会わなかったかな」
「会わない――」
「待っていさッしゃったが、羽生で待ってるかもしんねえッて三時ごろ帰って行かしった……」
「そうか――羽生には寄らなかったもんだから」
こう言ってかれは羽織をぬいだ。
三十三
次の土曜日にも出かけた。その日も荻生さんはたずねて来たがやっぱり不在《るす》だった。行田の母親からも用事があるから来いとたびたび言って来る。けれど顔を見せぬので、父親は加須《かぞ》まで来たついでにわざわざ寄ってみた。べつだん変わったところもなかった。このごろは日課点の調べで忙しいと言った。先月は少し書籍《ほん》を買ったものだから送るものを送られなかったという申しわけをして、机の上にある書籍《ほん》を出して父親
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