意とが争い、理想と欲望とがからみ合う間にも、体《からだ》はある大きな力に引きずられるように先へ先へと進んだ。
渡良瀬川《わたらせがわ》の利根川に合《がっ》するあたりは、ひろびろとしてまことに阪東《ばんどう》太郎の名にそむかぬほど大河《たいか》のおもむきをなしていた。夕日はもうまったく沈んで、対岸の土手にかすかにその余光《よこう》が残っているばかり、先ほどの雲の名残りと見えるちぎれ雲は縁を赤く染めてその上におぼつかなく浮いていた。白帆がものうそうに深い碧《みどり》の上を滑って行く。
透綾《すきや》の羽織に白地の絣《かすり》を着て、安い麦稈《むぎわら》の帽子をかぶった清三の姿は、キリギリスが鳴いたり鈴虫がいい声をたてたり阜斯《ばった》が飛び立ったりする土手の草路《くさみち》を急いで歩いて行った。人通りのない夕暮れ近い空気に、広いようようとした大河《たいか》を前景にして、そのやせぎすな姿は浮き出すように見える。土手と川との間のいつも水をかぶる平地には小豆《あずき》や豆やもろこしが豊かに繁った。ふとある一種の響きが川にとどろきわたって聞こえたと思うと、前の長い長い栗橋の鉄橋を汽車が白い煙《
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