って、草をしいて、喪心《そうしん》した人のように、前に白帆のしずかに動いて行くのを見ていることもある。「学校の先生さん、いやに蒼い顔しているだア。女さア欲しくなったんだんべい」と土手下の元気な婆《ばばあ》が言った。機織り女の中にも、清三の男ぶりのいいのに大騒ぎをして、その通るのを待ち受けて出て見るものもある。下村君《したむらぎみ》の村落にはいろうとするところに、大和障子《やまとしょうじ》を半分あけて、せっせと終日機を織っている女がある。丸顔の、眼のぱっちりした、眉《まゆ》の切れのいい十八九の娘であった。清三はわざわざ回り道していつもそこを通った。見かえる清三の顔を娘も見かえした。
 ある時こういうことがあった。土手の松原から発戸のほうに下りようとすると、向こうから機《はた》織り女が三人ほどやって来た。清三はなんの気もなしに近寄って行くと、女どもはげたげた笑っている。一人の女が他の一人を突つくと、一人はまた他の一人を突っついた。清三は不思議なことをしていると思ったばかりで、同じ調子で、ステッキを振りながら歩いて行った。坂には両側からしげった楢《なら》の若葉が美しく夕日に光ってチラチラした
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