街道が栄えた時分には、あれでもなかなかにぎやかなものでしたが、今ではだめですよ。私など、若い時にはそれはよく出かけたものですなア。利根川の渡しをいつも夕方に渡って行くんだが、夕焼けの雲が水にうつって、それはおもしろかったのですよ」と老訓導は笑って語った。
時には、
「今の若い者はどうもかた過ぎる。学問をするから、どうしてもそんなことはばかばかしくってする気になれんのかしれんが、海老茶《えびちゃ》とか庇髪《ひさしがみ》とかに関係をつけると、あとではのっぴきならんことが起こって、身の破滅になることもある。それに、一人で書《ほん》ばかり読んでいるのは、若い者には好《よ》し悪《あ》しですよ、神経衰弱になったり、華厳《けごん》に飛び込んだりするのはそのためだと言うじゃありませんか。青瓢箪《あおびょうたん》のような顔をしている青年ばかりこしらえちゃ、学問ができて思想が高尚になったって、なんの役にもたたん、ちと若い者は浩然《こうぜん》の気を養うぐらいの元気がなくっちゃいけませんなア」
などという。
清三が書籍《ほん》ばかり見て、蒼《あお》い顔をして、一人さびしそうにして宿直室にいると、「あんま
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