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[#ここで字下げ終わり]
こういうふうにかれの日記は続いた。昨年の春ごろにくらべて、心の調子、筆の調子がいちじるしく消極的になったのをかれも気がつかずにはいられなかった。時には昨年の日記帳をひもといて読んでみることなどもあるが、そこには諧謔《かいぎゃく》もあれば洒落《しゃれ》もある。笑いの影がいたるところに認められる。今とくらべて、世の中の実際を知らぬだけそれだけのんきであった。
消極的にすべてから――恋から、世から、友情から、家庭からまったく離れてしまおうと思うほどその心は傷ついていた。寺の本堂の一|間《ま》はかれにはあまりに寂しかった。それに二里|足《た》らずの路《みち》を朝に夕べに通うのはめんどうくさい。かれは放浪《ほうろう》する人々のように、宿直|室《べや》に寝たり、村の酒屋に行って泊まったり、時には寺に帰って寝たりした。自炊がものういので、弁当をそこここで取って食った。駄菓子などで午餐《ひるめし》をすましておくことなどもある。本堂の一間に荻生さんが行ってみると、主《あるじ》はたいてい留守で、机の上には塵《ちり》が積もったまま、古い新声と明星とがあたりに散らばっ
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