》に、さては南の森陰に、弟の弱きむくろはいかにあるらん。心のみにて今日も訪はず。かくて明日《みょうにち》は東に行く身なり。
七日。
羽生の寺に帰る。
心にはかくと思ひ定めたれど、さすがに冬枯れの野は淋しきかな。
□○子よ、御身《おんみ》は今はたいかにおはすや。笑止やわれはなほ御身を恋《こ》へり。さはれ、ああさはれとてもかかる世ならばわれはただ一人恋うて一人泣くべきに、何とて御身を煩《わずら》はすべきぞ。
主の僧ととろろ食うて親しく語る。夜、寒し。
九日。
今朝《けさ》、この冬、この年の初雪を見る。
夜、荻生君来たり、わがために炭と菓子とをもたらす。冷やかなる人の世に友の心の温かさよ。願はくばわれをして友に誠ならしめよ。(夜十時半記)
□十日より二十日まで
この間十日余り一日、思ひは乱れて寺へも帰らず。かくて老《お》いんの願ひにはあらねど、さすが人並《ひとなみ》賢《かしこ》く悟りたるものを、さらでも尚とやせんかくやすらんのまどひ、はては神にすがらん力もなくて、人とも多くは言はじな、語らじなと思へば、いとものうくて、日ごろ親しき友に文《ふみ》書《か》かんも厭《い》や、行田へ行かんも厭《いと
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