だことがある。その時は、そんなことがあるものかとよそごとに思ってすてた。けれどそれは事実であった。
家に帰ってみると、借金取りはあっちこっちから来ていた。母親がいちいち頭を下げて、それに応対しているさまは見るにしのびない。父親は勘定が取れぬので、日の暮れるころ、しょぼしょぼとしおたれた姿で帰って来る。「あゝあゝ、しかたがねえ!」と長大息《ためいき》をついて、予算の半分ほどもない財布を母に渡した。清三は見かねて、金をまた二円出した。
夜になってから、母親は巾着《きんちゃく》の残りの銭をじゃらじゃら音をさせながら、形《かたち》ばかりの年越しをするために町に買い物に行った。のし餅を三枚、ゴマメを一袋、鮭を五切れ、それに明日の煮染《にしめ》にする里芋を五合ほど風呂敷に包んで、重い重いと言ってやがて帰って来た。その間に父親は燈明を神棚《かみだな》と台所と便所とにつけて、火鉢には火をかっかっと起こしておいた。やがて年越しの膳《ぜん》はできる。
父親ははげた頭を下げて、しきりに神棚を拝んでいたが、やがて膳に向かって、「でも、まあ、こうして親子三人年越しのお膳に向かうのはめでたい」と言って、箸《
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