たって」は底本では「てたって」]とめた。
 清三は、くわしく聞きたかったが、しかしその勇気はなかった。胸がただおどった。
 雪子が笑っているので、
「いったいどうしたんです?」
「どうしたっていうこともないんですけど……」
 やっぱり笑っていた。やがて、
「変なことおうかがいするようですけど……貴郎《あなた》は兄と北川さんとのことで、何か思っていらっしゃることはなくって?」
「いいえ」
「じゃ、貴郎《あなた》、二人の中にはいってどうかしたッていうようなことはなくって」
「知りません」
「そう」
 雪子はまた黙ってしまった。
 しばらくしてから、
「私、小畑さんから変なこと言われたから、……」
「変なことッて? どんなことです」
「なんでもありませんけどもね」
 話が謎《なぞ》のようでいっさい要領《ようりょう》を得なかった。
 午後、とにかく北川に行ってみようと思って沼の縁《ふち》を通っていると、向こうから郁治がやって来た。
「やあ!」
「どこに行った?」
「北川へちょっと」
「僕も今行こうと思っていた」と清三はわざと快活に、「Art 先生帰っているッていうじゃないか」
「うむ」
 二人
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