は清三に言った。
収穫《とりいれ》がすむと、町も村もなんとなくにぎやかに豊かになった。料理屋に三味線の音が夜更けまで聞こえ、市日《いちび》には呉服屋唐物屋の店に赤い蹴出《けだ》しの娘をつれた百姓なども見えた。学校の宿直室に先生のとまっているのを知って、あんころ餅を重箱にいっぱい持って来てくれるのもあれば、鶏《にわとり》を一羽料理して持って来てくれるものもある。寺では夷講《えびすこう》に新蕎麦をかみさんが手ずから打って、酒を一本つけてくれた。
木枯の吹き荒れた夜の朝は、楢《なら》や栗の葉が本堂の前のそこここに吹きためられている。銀杏《いちょう》の葉はすっかり落ちつくして、鐘楼《しょうろう》の影がなんとなくさびしく見える。十一月の末には手水鉢《ちょうずばち》に薄氷が張った。
行田の友だちも少なからず変わったのを清三はこのごろ発見した。石川は雑誌をやめてから、文学にだんだん遠ざかって、訪問しても病気で会われないこともある。噂《うわさ》では近ごろは料理屋に行って、女を相手に酒を飲むという。この前の土曜日に、清三は郁治と石川と沢田とに誘われて、このごろ興行している東京の役者の出る芝居に行っ
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