かしてチラチラする机の上で書いた。
 学校の校長は、検定試験を受けることをつねにすすめた。「資格さえあれば、月給もまだ上げてあげることができる。どうです、林さん、わけがないから、やっておきなさい!」と言った。
 このごろでは二週間ぐらい行田に帰らずにいることがある。母が待っているだろうとは思うが、懐《ふところ》が冷やかであったり、二里半を歩いて行くのがたいぎであったり、それよりも少しでも勉強しようと思ったりして、つねに寺の本堂の一間に土曜日曜を過ごした。しかしこれといって、勉強らしい勉強をもしなかった。土曜日には小畑が熊谷からきて泊まって行った。郁治が三日ぐらい続けて泊まって行くこともあった。それに、荻生君は毎日のようにやって来た。学校から帰ってみると、あっちこっちを明《あ》けっ放《ぱな》して顔の上に団扇《うちわ》をのせて、いい心地をして昼寝をしていることもある。かれは郵便局の閑《ひま》な時をねらって、同僚にあとを頼んで、なんぞといっては、よく寺に遊びに来た。
 若い二人はよく菓子を買って来て、茶をいれて飲んだ。くず餅、あんころ、すあまなどが好物で、月給のおりた時には、清三はきっと郵便
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