『でも……見てゐても、お傷はしうございますもの……』
『だつて、しようがない……』
『殿は?』
 その交情が呉葉には心配になるのであつた。
『別に何でもない……』
『でも……』
 早くそゝくさと歸つて行つたのを呉葉は心配した。
『だつて、お前、さういふことは成行にまかせるより他爲方がないぢやないか……』
『でも……』
『もつとお前は私に殿の機嫌を取れと言ふの?』
 窕子はじつと呉葉を見詰めた。
『さういふわけではございませんけれど……』
『だつてお前……私の心が言ふことをきかないから仕方がない。昔から女子はそのやうに出來てゐると言うたとて、男に玩弄具のやうに取扱はれて、それで言ふことはきいて居られるか、何うか。そちにもそれはわからぬことはよもあるまい――』窕子の眼には涙が光つた。
『それはわかつてをりますけども……』
『坊の小路なら、さういふことも出來るだらうけれども、この身は……この身は……さういふ女子とは違ふほどに……』
『それは、それは――』
 呉葉も後には困つた。
『それはそちの心はわかる。そちは、この身を思ふあまりに、さう言うてその身のことのやうに心配して呉れるのだらう。それ
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