てゐる窕子を幾重にもなだめた。
 兼家の衣は爲方なしにもどしてやることにした。

         一八

 さびしい秋が續いた。野分がすさまじく始終吹いたり、虫の音が悲しく枕近くきこえたりした。窕子は深くたれこめてのみ暮した。
 いくらこひしいと言つても、その身の矜持までも捨てゝかれの來るのを待つわけには行かなかつた。此身を思うて呉れればこそそこに縋つて行く心持も起つて來るのである。思ひもして呉れないのに……坊の小路の女達や河原の人などと同じづらに持てあつかはれて、たゞ玩弄品か何かのやうに見られてゐるのに、いくら此方でばかり深く思つて見たところで効がなかつた。窕子はそこに深い深い失望を感じた。そしてそれは今まで感じて來た輕い失望のやうなものではなかつた。かの女はその悲しみと失望との中に、さびしい秋の自然が、山にたなびきわたつて眺められ雲のたゝずまひが、野分に吹きなびけられてゐる尾花が、夜もすがらきこえて來る虫の音が、またはさびしく降しきる軒の雨がすべて細かに織り込まれて來るやうな氣がした。
 二三年前までならば、たとへ何んな苦しみがあつたにしても、また何んな悲しみがあつたにしても、い
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