れども、しかしその一伍十什を母親からかくして了ふことは出來なかつた。
 母親も昔氣質の腹を立てずにはゐられないやうに見えた。それが男の兒であるときいた時には、見る見るその顏の色も變つて行つた。
『殿も殿だ……』
 かう母親は口癖のやうに言つた。

         一七

 七月になつてからであつた。ある日、使のものが古い衣と新しいのと一領づゝ物に包んで、急いでそれを仕立直すやうにとて持つて來た。
 まさかことはるわけには行かないので、呉葉はそれを受取るには受取つたけれども、窕子に見せたら、何と言ふだらう。そのやうなけがらはしいものは手に觸れるのもいやだといふだらう。さういふことをする人は他にあるだらうといふだらう。否、感情に強い窕子はそれを見たら、赫となつて、それをピリピリ破つて捨てゝ了ふかも知れない。呉葉は間に立つて困つてゐると、ちやう度そこに母親が來た。
『まア、殿は少しも來もせずに、何といふ――』
 母親も呆れた。
『何ういたしませうか?』
『さア、何うしたら――』
『兎に角一度お目にかけた方が宜しいでせうか』
『さうぢやなう、見せた方が好いぢやらう……。しかしあんまり好い氣ぢ
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