う思つては呉るゝな。此方にも今までは知らせずにしてあつたが、少し手放されぬ厄介なことがあつて、それでかういふ風に無沙汰になつた。それもやつと昨日すんだ。しかし身も穢れて居るので、當分は宅に籠もつてゐるより他に爲方がない。非常にあさましう、つめたく思ふかも知れぬが、そなたのことは忘れたのではないからなどといつもよりも細々しくやさしく筆を走らせてゐるのを窕子は見た。使のものもいつもの下衆とは違つて、自分の下につかつてゐる史生見たいなものだつた。で、それとなく呉葉にきかせた。
 やがて呉葉はもどつて來たが、窕子の傍に寄添つて來た。
『え?』
 窕子は耳を寄せた。
『さうなの? 男の子なの? ふむ……』かう言つたきりだつた。窕子の顏は急に赤くなつた。
 呉葉にはその窕子の心の動搖がよくわかつた。しかし何うすることも出來なかつた。二人はそのまゝにだまつた。
 暫くしてから、
『おかへしは?』
 かう呉葉が訊くと、
『ないと言つてお呉れ……』
 かう言つたまゝ窕子は向うむきになつて了つた。
 そこに母規も近寄つて來た。
『何うかしましたか?』
『いゝえ、別に……』つとめてその心持を押へようとしたけ
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