言つてそして飛んで遁げた。
『つまらないなア……本當につまらないなア!』
道綱が言ひつゞけた。
『つまらなきやお歸んなさいな……蝉なんか取りにつれて來たんぢやありません!』
『だつて、あんなにゐるんだもの』
こんなことを言つてゐると思ふと、二三歩先きに歩いてゐたかをるがキヤツと言つて夥しく聲を立てた。驚いてそつちを見ると、さう大して大きいといふほどではないが、いくらか赤い斑を見せた三尺ぐらゐの蛇が、するすると路から草原の中へと入つて行くのだつた。
『や、くちなは!』
道綱は別に怖いとも思はずに、却つてその草原へとそのあとを追つて行つた。
『こら、およしつたら……。本當に、此頃、この子が言ふことをきかなくなつたねえ! もし、わるいくちなはでもあつたら何うするんです――』
道綱は路傍に生えてゐる篠竹を折つて、それを鞭のやうにして、まだそこいらに蛇がゐはしないか、ゐたら、今度こそ遁がさないと言つたやうに草原の中を打ちつゝ先に立つた。
『本當に、何うしてこんなにいたづらになつたか……。とても、これでは殿上など出來はしない……』
誰に言ふともなく窕子が言ふと、
『大丈夫ですねえ……。父
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