出來ない……何うしても出來ない。學べば學ぶほどむづかしくなる。それでゐながら、ひとり手に出て來る段になると、何の面倒もなくすぐそこにある……。あなたがいつか歌といふものについてさうおつしやられた……。法華經の中心を成してゐるものはやはりそれだと思ひます……』
『つまり、さうしますと、その高遠な思想が何處にでもあるといふことになるのでございますか?』
『さうなります……。何處にでもある。それだから難有いのでございます。たゞ一心といふこと――ひとつの心を持するといふこと、さう言つて了つては或ひは言ひすぎるかも知れませんけれども、つまり他には何もない。その經文を持してゐさへすれば好い。それより他に理窟はない。さういふところに非常に深いところがあるのでございます……あらゆる經文が皆なそこに入つてゐるのでございます――』
『さうしますと、あのお經に書いある字とか、理由とか、方則とか、さういふことよりももつと別なところにその中心がございますのですね』
『まア、さうですな……』
 聰明な窕子にもそれだけではまだはつきりとはわからないらしかつた。『その一心といふこと、その一心を持するといふこと――それ
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