ろが、密教の行ひと申すのでございませうか?』
『さやうでございます……。あのしまひの方で磬を鳴らすところがござりませう。あそこがあの祈祷の眼目になつてゐるのです……』
『本當に、あそこは難有い心持が致しますの……。やはり、あゝいふところになりますと、心はずつと靜まつて、いろいろな煩惱は皆な小さな、小さなもののやうになつて了ひます……』
『今度の大徳は密教には中々深く通じて居られますから、信用してあの行を見ることが出來るやうな氣が致します、……。さうです、高野の眞言とはいくらか違つてゐるやうです。もつと天臺の智者大師のひろめられたものの方に近いやうでございます……。ですから、密教と申しても餘程初期の感じがまだ殘つてゐるやうでございます……。そこが尊い……そこが他の御堂では味はれないところだと思ひます……』あるじの僧はこんなことを言つて、靜かな調子で、にこやかに笑ひながら、かなり深く難かしいところまで密教の話を持つて行つた。
窕子は益々そつちへと引かれて行くやうな氣がした。自分たちの生活とこの靜かな生活と。瞋恚と煩悶と嫉妬と爭鬪とで滿たされた生活とこの高遠な普通ではわからない學問にのみ精
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