いますとも……それはいづれはさういふことになるだらうとは申してをりましたけれども、さう急なこととは存じて居りませんでした……。ですから姫もおどろかれて、一時は突伏したまゝ、お顏も上げられませぬでした……それはそれは、泣くくらゐのことではございません。姫は何んなに悲しうあらせられたことか……しかし、何と申しても勅でございますゆゑ……』
『まア、何と申したら好いのでございませうね』
『でも、平生やさしい上に雄々しいところもある姫のことでございますから、すぐ御決心あそばしまして、※[#「日+向」、第3水準1−85−25]とたゝぬ中に十分御支度をなすつて御出立なさいました……』
『悲しい女子のさだめ!』
 皆はそこに顏を合はせて泣くのだつた。あたりは次第に薄暮の空氣につゝまれて行つた。窕子と呉葉とは、再び古びた藺笠をかぶつて、泥濘の中をとぼとぼと自分の家の方へと行つた。林に添つた路を通る時には、雨だれがばらばらとその笠の上に落ちた。

         二七

 兼家の方のことも心配にはなつたけれども、物忌が明けない中は、そつちの方へもどつて行くことも出來ないので、幼い道綱を相手に――むしろた
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