れで蔽うてゐるが、それは佛の本當の道ではない……とよう言うてをられた。佛はわれぢや。この身ぢや。そなたぢや。とよく言うてをられました……』
『ほんに、そのやうに新しい方でございましたか。それなら、一度でも御目にかゝつて置きたうございました。この身はまたこの身で、今の世の中には、そのやうなことを考へて居らるゝ方はない。詩歌管絃……蹴鞠……酒……女子……さういふものより他心にかけて居るものはないと思うてゐましたのに……。』
『宮はこの世には事なくて生きてゐらるゝ方ではなかつた……』
 登子はいろいろなことを思ひあつめたといふやうにして言つた。登子の眼には、網代車を夜暗に細い巷に引入れる人だちだの、大内裏の局の女房に人知れず通つてる人だの、夜もすがら詩歌管絃に遊蕩のかぎりをつくしてゐる人だちだのが――またはこつそりと姫を圍うてゐる坊主や、宮女に花のやうに取卷かれてゐる人だちなどが、はつきりとそこに映つて見えるのだつた。ことに、何も知らない女子が、長い間の慣習のためにそれをあたり前と考へてゐるばかりではなく、女子といふものはそれで好いもの、いかやうに男にもてあそびものにされても好いもの、むしろ
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