るく點されてあつた。そこは侍女の常葉のゐるところだつた。
 輕い裳づれの音がしたと思ふと、いきなりそこに登子がその美しい顏を出した。
『まア、よく……』
『まア――』
 二つの美しい聲がそこに取り交はされた。
 かれ等はすぐ奧の明るい室の方へと行つた。
『本當に、どんなに心配したかわからないのでございますよ』
『それでもよくこんなところがわかりましたね』
『家がすぐそこなものですから……』
『あゝさう、それでわかつたの? それでいつから來てるの?』
『忌違へに來たのですけども、この雨で、とても………』
『ほんに、此雨は……』
 短かい言葉しか二人とも話せないやうな時間が暫しつゞいた。
 窕子は思ひ做しか此間逢つた時とはぐつとやつれて元氣がなくなつてゐる登子を見た。
『お痩せになりましたねえ?』
『さう……』
 登子は微かに笑つた。
 相對してゐる中に、いろいろなことが次第に飮み込めて來た。式部卿の宮の死は、さうだとは登子は決して言はなかつたけれども、しかし藥を仰いでの死であるといふことはそれと察しられた。また登子がかうして他に知られないやうに廢宅に身を忍ばせてゐるといふことは、やつぱり
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