さみだれが降り頻つた。容易に止みさうにもなかつた。卯の花の白く籬に咲いてゐるのがそれと夕暮近い空氣の中にくつきりと出てゐた。わざと他に知れないやうに、裏道になつてゐる草の露の中をかれ等はそつと拾ふやうにしてたどつた。古い藺笠。小さな裏。ともすれば女沓が泥濘の中に埋れさうになるのを辛うじて縫ふやうにして二つの姿は半ば潰れた門の方へと入つて行つた。
 門に入つてからも、かれ等は足場のわるいのに苦しまずにはゐられなかつた。そこにはつい此間まで庭の一部分であつた池があつて、藻だの萍だの芦だのに雨が頻に降りかゝつてゐるのを見た。あたりはひつそりしてるた。成ほどこゝいらはちよつと他にはわかりさうにも思はれなかつた。茂つたまゝ延びたまゝに樹が一面にあたりを暗くしてゐた。
 池の周圍をぐるりと廻つて、やつとその對屋の階段のところへ行つて、そこにそのかぶつて來たぬれた藺笠を脱いだ。かれ等はあたりを見廻した。
 誰も出て來るものもなかつた。それも理だつた。今時分、降りしきる雨を侵してこんなところにやつて來るものがあるなどとは誰も思ひもかけないことだつた。かれ等は爲方なしに、そつとその階段をのぽつて行
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