の耳を驚かした。窕子は中でもことに驚いたもののひとりであつた。かの女は一番先きに登子のことを考へた。つゞいて兼家がやつて來た時、それとなしに聞いて見た。しかし何うしてか兼家もはつきりしたことを言はなかつた。『さア、それはわからぬが、そのやうなことはあるまいと思ふな? 平生がお弱い方だつたから、急に風邪を引いたのがもとになつたのらしいな。そのやうなことはあるまい。失戀して自づから死んだなどいふことはあるまい……。宮はさういふ風に意志の強い方ではなかつた』などといくらか他にそらすやうにして言つた。登子のことに關しては、『まア、そのやうなことはあまりに深くきかぬ方が好いな……』かう言つただけで兼家はそのまゝ口を噤んで了つた。
しかし世間ではいろいろなことを噂した。御門の戀の犧牲になつたのだなどと言つた。宮の死はおそれ多いが自ら藥を飮ませられたのだなどと言つた。またその末の君がそれがため絶望のどんぞこに墮ちて氣も狂ひさうになつてゐるのを、無理に内裏に上げるやうにしてゐるので、そこにもまた一悲劇持上るに違ひないなどと評判した。窕子にしても眞相がわからぬので、ひそかに心を痛めてゐるのであつた。そ
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