進んで行くさまは、はつきりと絵になつてBの眼の前に描き出された。Bは古い駅舎の※[#「火+亢」、第4水準2−79−62]《かう》の上に毛布を敷いて夜ごとに佗しく寝るH夫妻を想像した。一輌の轎車の覚束なく塞外の地へと一歩々々動いて行くさまを想像した。またあのドイツ種《しゆ》の大きな犬が絶えずその若い美しい夫人を護衛して進んで行つてゐるさまを想像した。
底本:「定本 花袋全集 第二十一巻」臨川書店
1995(平成7)年1月10日発行
底本の親本:「アカシヤ」聚芳閣
1925(大正14)年11月10日発行
初出:「婦人公論 第九年第九号」中央公論社
1924(大正13)年8月1日発行
入力:tatsuki
校正:林 幸雄
2009年4月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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