蒲団
田山花袋
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)切支丹坂《きりしたんざか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎日|正午《ひる》から
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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一
小石川の切支丹坂《きりしたんざか》から極楽水《ごくらくすい》に出る道のだらだら坂を下りようとして渠《かれ》は考えた。「これで自分と彼女との関係は一段落を告げた。三十六にもなって、子供も三人あって、あんなことを考えたかと思うと、馬鹿々々しくなる。けれど……けれど……本当にこれが事実だろうか。あれだけの愛情を自身に注いだのは単に愛情としてのみで、恋ではなかったろうか」
数多い感情ずくめの手紙――二人の関係はどうしても尋常ではなかった。妻があり、子があり、世間があり、師弟の関係があればこそ敢《あえ》て烈《はげ》しい恋に落ちなかったが、語り合う胸の轟《とどろき》、相見る眼の光、その底には確かに凄《すさま》じい暴
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