のを少し捜してこようと思ったのである。と、同時に赤児が声を挙《あ》げて泣き出した。で、お作はふらつく脚《あし》を踏み占めながら、まず抱き上げて、出ぬ乳を吸わせたが、容易に泣きやもうともせぬので、今度は黒砂糖を水に溶かして、吸い口をあてがってみた。で、どうやらこうやら泣きやんだので、それを古い帯で背にくくりつけて、そのまま戸外に出た。
灰色の雲は低く垂れて、なんとなく頭を圧《おさ》えられるような空模様であった。お作の小屋は温泉場の裏の斜坂の中央に当たっているので、下にはまずまばらに茅葺屋根《かやぶきやね》、大根の青い畑が連って、その下に温泉場、二階三階、大湯から出る湯の煙、上を仰ぐと、同じ畠《はたけ》の斜坂《さか》の爪先《つまさき》上がりになっている間に一条《ひとすじ》の路がうねうねと通って、その向こうは煙るような楢林《ならばやし》の灰色が連続した。
高い山には炭焼きの煙が見える。
お作は家を出てその畠道を歩いた。つらいその身の境遇や、悲しい追懐よりも、ひもじいという念が第一にその胸に押し寄せてきて、何か畠に食うものはないかとあたりを見まわした。牛蒡《ごぼう》畑、大根畑が一面に連な
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