話をした。
あのおとなしい静かな兄弟子が、世話人の話すやうな残忍無恥な、又は貪欲《どんよく》な、又は無残な行為をして、あの老僧の経営した寺をかうした廃寺にして了《しま》はうとはかれは夢にも思はなかつた。世話人の言ふ所に由《よ》ると、この先住の女戒《によかい》を破つた形は殊《こと》に烈《はげ》しかつた。最初の中は此方《こつち》から身を躱《かく》して、こつそりさういふ土地に出かけて行つたが、後には平気で、幅《はゞ》で、女を庫裡《くり》へ伴《つ》れて来ては泊らせてやつた。かれは放蕩《はうたう》のための金がなくなると、仏具を売り、植木を売り、経文を売り、後には僧衣《ころも》や袈裟《けさ》までをも売つた。たうとうそのために問題が大きくなつて、寺にゐられなくなつた。伐採した杉森の跡は、今でもちやんと指点された。
「今は何うしてゐるだらう?」
かう新しい住職はをり/\兄弟子のことを考へた。「何でも、東京に行つてゐるさうです。最後の女と浅草あたりで道具屋か何かしてゐるさうです。」かう世話人は言つた。しかし、それももう八九年も前のことであつた。今は死んだか生きてるかわからなかつた。
兎《と》に角《
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