ある僧の奇蹟
田山花袋
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)無住《むぢゆう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)長い間|跪《ひざまづ》いて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)をさ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
久しく無住《むぢゆう》であつたH村の長昌院には、今度新しい住職が出来た。それは何でも二代前の老僧の一番末の弟子で、幼い時は此の寺で育つた人だといふことであつた。「ほ、あのお小僧さんが? それはめづらしいな。」などと村の人達は噂《うはさ》した。
先代の住職が女狂ひをして、成規《せいき》を踏まずに寺の杉林を伐《き》つて売つたりして、そのため寺にもゐられなくなつてから、もう少くとも十二三年の歳月は経過した。始めは一里ほど隔つた法類のT寺がそれを監督したが、そこの和尚《をしやう》も二
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