で身体《からだ》をゆすりながらいやいやをしながらむずかりました。
この時、寝室の窓からお月様が、にっこり覗《のぞ》きこみました。
「そら御覧!」
お母様はお月様の方を指しながら仰言った。
「お月様がみっちゃんに「おやすみ」を言いにいらしたよ。まあお月様がにこにこ笑っていらっしゃる」
お月様は、幹子の眼《め》のうちに輝いた。それは恰度《ちょうど》、「好《よ》い児《こ》のみっちゃんおやすみ」と言っているように見えました。
幹子は、寝床の中からお月様の方を見あげて「お月様おやすみなさい」
そう言って枕《まくら》に頭をつけて、お月様を見ながら、お母様の子守唄《こもりうた》をききました。
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お月様の美しさ
天使のような美しさ
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「母様! お月様は小羊も寝かしてやるの?」眠《ね》むそうな顔をした幹子がたずねました。
「ええお月様は小羊でも山の兎《うさぎ》でも寝《ねか》しておやんなさるよ」
幹子《みきこ》の目蓋《まぶた》は、もう開けられないほど重くなって来ました。けれどお月様は、やっぱり窓からお母様や幹子の寝床を照《てら》しました。
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