竹久夢二

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)薔薇色《ばらいろ》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大変|御贔屓《ごひいき》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから4字下げ]
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 ある春の朝でした。
 太陽は、いま薔薇色《ばらいろ》の雲をわけて、小山のうえを越える所でした。小さい子供は、白い小さい床《ベッド》の中で、まだ眠って居《お》りました。
「お起き、お起き」柱に掛った角時計が言いました。「お起き、お起き」そう言ったけれど、よく眠った太郎《たろう》は何も聞きませんでした。「私が起して見ましょう」窓に近い木のうえに居た小鳥が言いました。
「坊ちゃんはいつも私に餌《えさ》を下さるから、私がひとつ唄《うた》を歌って坊ちゃんを起してあげよう」
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好《よ》い子の坊ちゃんお眼《め》ざめか?
寝た間に鳥差《えさ》しがさしにくる
[#ここで字下げ終わり]
 庭にいた小鳥がみんな寄って来て声をそろえて歌いました。それでも太郎はなんにも聞えないように眠っていました。
 海の方から吹いて
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