人形物語
竹久夢二

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)女の児《こ》と

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   1

 あるちいさな女の児《こ》と、大きな人形とが、ある日お花《はな》さんのおうちをたずねました。
 ところが その女の児は、それはもうほんとに、ちいさな女の児で、その人形はまた、それはそれはすばらしい大きな人形だったのです。
 それゆえ、お取次に出た女中には、人形だけしか眼《め》に入らなかったのです。女中はおどろいてお花さんに、
「まあお嬢さま! 大きなお人形さんがお嬢さまに逢《あ》いにいらっしゃいましたよ」と言いました。

   2

「玉《たま》ちゃん」茶の間で、お母様の声がする。
「はあ」と愛想よく玉ちゃんは答えました。
「後生ですから、そこから鋏《はさみ》をもってきて頂戴《ちょうだい》な、ね」こんどはだまっていましたが、いそいでそこにあった人形を抱きあげて、
「あたし、いま、人形におっぱいあげていますの……」と言いました。暫《しばら》くすると可愛《かあ》い子守唄《こもりうた》がき
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